西久保の名物おじさん

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2024年3月19日。今朝も8時半くらいから起きてそのまま散歩に出た。まだひんやりした空気で、小学校の遠足で行った軽井沢の朝を思い出す。梅は着々と蕾を膨らませ、咲いている数も増えてきた。同じ梅を毎日観察している最近である。

道中で、西久保のおじさんに会った。この人はいつもうちの隣の保育園の斜め前に一日中立っている。朝から夕方まで、ただ道ゆく人全員に微笑んで挨拶しているだけ。車で通る人にも時々挨拶している。本当に毎日いるから、最初は工事の見張りか何かをしている人だと思っていた。しかし、何も持っていないし、何もしていない。ただ笑顔で全ての人に挨拶するだけ。無論、私も例外ではない。家を出るとき手を振って挨拶すると、彼はニコッと笑って振り返す。それが私たちの毎日の慣例になり、欠かすことはない。

昨日驚いたのは、そのおじさんがいつもの定位置でないところに立っていたことだ。私は気になって、「今日はいつもと場所が違いますね」と言う。「火曜日はね、ここで看護師さんを待ってるんだよ」笑いながら彼は答えた。看護師さんに挨拶するためにここに位置替えしているのかと思って、少し怖いよそれはと思ってしまった。しかし、「なんで看護師さんを待っているんですか」と聞くと、「おれ11年前に脳梗塞になったの、知ってる?」「知るわけないでしょう」おれは笑った。この人は変わった人だ。するとその看護師さんが車でやってきた。きっと今も毎週火曜日に診てもらっているんだろう。

あの人はもしかしたら一度死にかけたのかもしれない。そうでもなければ、あんな毎日一日中立って挨拶だけをするような境地に辿り着く理由が分からない。ここら辺に住んでいる人は皆彼の存在を知っている。それは間違いない。しかし、彼の仕事を知る人はいない。いや、挨拶が彼の仕事なのかもしれない。西久保の名物おじさん、謎は謎のままの方がいい。

また昨日は、おれのおじいちゃんの誕生日だったので電話をした。84歳になったそう。おばあちゃんも一緒に出て、話した。おじいちゃんは耳は悪いが、頭の回転は早い。二人とも、ジョークを飛ばしてキレキレだったから、まだまだ安心だなと思った。元気なうちに、いっぱい会って楽しませてあげたいものである。

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