2024年3月26日火曜日。久しぶりの激しい雨。今日一日続くらしい。
昨日一昨日と広島旅行をしてきた。日曜の朝6時半に東京駅に集合する予定だったが、けんとの姿が見えない。3回目の電話でやっと起きて、大焦りしている。とりあえず彼を落ち着かせ、なんとか間に合うような時間を調べて言い渡す。起きてから電車に乗るまでの彼のスピードは凄まじく、これならぎりぎり間に合うだろうと私は思っていたが、甘かった。ゲート締切後に到着した彼は懇願したが、厳しいお兄さんにつっぱねなれ、飛行機に乗れなかった。
彼の悲劇はここからだった。焦っていたせいで空港で財布を無くし、見つかった財布からは2万五千円と60ドル、さらにカードまで抜き取られ、残っていたのはタイのバーツだけだった。悲嘆にくれる彼を励まし、とりあえずお金は工面するからと言って新幹線で来させた。夜に広島出身の友達から教えてもらったお好み焼きの「シン・コイクチヤ」で合流し、そこはおれとれいで折半した。彼は申し訳なさそうに感謝していた。優しくて律儀な男だから。
ちなみにこのお好み焼き屋は大正解で、ドリンクはハイボール一杯340円、お好み焼き一玉650円と大変安く、その上量も味も申し分ない。大満足でケントも少し気を取り戻せたと思う。
二日目は朝8時くらいにホテルを出て市街地から厳島に向かった。船から渡る際に見るこの島からすでに只ならぬ存在感を感じた。霧が山にかかっていたせいかもしれない。ここでもその広島の友達から勧められた弥山登山をやった。頂上まで1時間半の登山道。聳え立つ木々と頑強な岩、生い茂るコシダに時鳥の囀り、これらを全て包み込む深い霧。疲れも感じさせないほどエネルギーを与えてくれた。頂上の売店で手拭いを買った。普段はそういうお土産は買わないのだが、ここのなら欲しいと素直に思った。手拭い集めをしているれいの影響もあったかもしれない。
下山して初めて観光地通りを通りその観光客の多さに驚く。鎌倉の小町通りのような感じ。興醒めしたが、登山に時間を使ってよかったとも思えた。登山道で驚いたのは行き交う人の八割以上が外国人であることである。すれ違った地元のご夫婦は、「登山してる日本人見るの久しぶりだなあ、外国人ばっかりで英語覚えちゃったもん」と愉快な冗談を言って笑っていた。さらにもう1人、犬を連れた30代くらいの男の人と行き違う時には、「あともう少しで頂上だよ。ほんともう少し、100mくらいじゃないかな」と励ましてくれて、すでに小一時間登ってきた私たちは一気に疲れが消えた。しかしそれはぬか喜びで、結局そこから45分くらい登り続けた。「あの野郎騙しやがったな」とおれたちは笑った。笑いで済ませられたのは、疲れていたがこの道中が楽しくて、もっと味わっていたいという思いが少しあったからなんだろう。これがただの修行道だったら、あの男に腹を立てていただろう。
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